カスタマージャーニーマップの代表的なテンプレートとその活用法

カスタマージャーニーマップは、顧客の体験を視覚的に表現するための強力なツールです。適切なテンプレートを選ぶことで、顧客の行動や感情をより効果的に把握し、ビジネス戦略の改善につなげることができます。このブログでは、代表的なカスタマージャーニーマップのテンプレートとそれらの特徴、活用方法について詳しく解説します。
カスタマージャーニーマップとは?
カスタマージャーニーマップとは、顧客がブランドや製品・サービスと接触してから購入に至るまで(そしてその後も)の一連のプロセスを可視化したものです。顧客の行動、感情、痛点などを時系列で整理することで、ビジネス改善のヒントを得ることができます。
代表的なカスタマージャーニーマップのテンプレート
1. 基本的なカスタマージャーニーマップ

基本的なカスタマージャーニーマップは、顧客の行動を段階ごとに整理し、各段階での感情や接点を可視化します。シンプルながら効果的な構造が特徴です。

特徴と解説:
- 横軸に顧客の行動フェーズ(認知、検討、購入、使用、推奨など)を配置
- 縦軸に感情曲線、タッチポイント、痛点、機会などを配置
- シンプルで導入しやすく、チーム内での共通理解を得やすい
使い方:
- ターゲットとなるペルソナ(顧客像)を設定する
- 顧客の行動を時系列で段階分けする
- 各段階でのタッチポイント(接点)を書き出す
- 顧客の感情の変化を曲線で表現する
- 痛点(ペインポイント)と機会を特定する
2. 感情曲線に重点を置いたジャーニーマップ

感情曲線型のジャーニーマップは、顧客の感情の変化に焦点を当て、体験の中での感情的な起伏を可視化することで、改善が必要なポイントを特定します。

特徴と解説:
- 顧客の感情変化を中心に据えたデザイン
- ポジティブ/ネガティブの感情を縦軸で明確に表現
- 感情の起伏と各タッチポイントの関連性を視覚化
- 感情のピークと谷を特定しやすい構造
使い方:
- 顧客旅程の各段階を横軸に設定する
- 感情レベル(ポジティブ/ネガティブ)を縦軸に設定する
- 各段階での顧客の感情状態をプロットする
- 感情の変化を曲線で繋ぎ、起伏を表現する
- 感情が大きく変化するポイントに注目し、改善機会を見出す
3. タッチポイント中心のジャーニーマップ

タッチポイント中心のジャーニーマップは、顧客と企業の接点に焦点を当て、各チャネルでの顧客体験を詳細に分析します。マルチチャネル戦略の最適化に役立ちます。
特徴と解説:
- 顧客との接点(タッチポイント)に焦点を当てたデザイン
- チャネル(WEB、店舗、電話、メールなど)ごとの体験を整理
- 部門やステークホルダーの関与も明示
- チャネル間の連携や不一致を発見しやすい
使い方:
- 顧客の行動フェーズを横軸に設定する
- 各チャネル(WEB、店舗、SNSなど)を縦軸に設定する
- 各フェーズとチャネルの交差点にタッチポイントを記入する
- タッチポイントごとに顧客の反応や感情を記録する
- チャネル間のギャップや連携の問題点を特定する
4. サービスブループリント型ジャーニーマップ

サービスブループリント型ジャーニーマップは、顧客の体験だけでなく、それを支える企業側のプロセスや裏側の活動も含めて可視化します。顧客接点と内部プロセスの関連を明らかにします。

特徴と解説:
- 顧客の行動と企業内部のプロセスを同時に可視化
- 「フロントステージ」(顧客に見えるプロセス)と「バックステージ」(裏方のプロセス)を区別
- サポートシステムやインフラも含めた全体像を把握可能
- サービス提供のボトルネックや非効率を発見しやすい
使い方:
- 顧客の行動を最上部に配置
- その下に物理的証拠(顧客が見える要素)を配置
- さらにフロントステージアクション(顧客と直接やりとりする従業員の行動)を配置
- バックステージアクション(顧客から見えない業務プロセス)を配置
- サポートプロセス(システムやインフラ)を最下部に配置
- 各要素間の連携と依存関係を線で結ぶ
5. デジタル中心のカスタマージャーニーマップ

デジタル中心のカスタマージャーニーマップは、オンライン上での顧客体験に焦点を当て、Webサイト訪問からコンバージョンまでのプロセスを可視化します。デジタルマーケティングの改善に有効です。

特徴と解説:
- デジタルタッチポイントに特化したデザイン
- ウェブサイト、アプリ、メール、SNSなどのオンライン接点を詳細に分析
- ユーザーの行動データ(クリック率、滞在時間など)も取り込める
- デジタルマーケティング施策の効果測定に最適
使い方:
- デジタル顧客体験の各段階(初回訪問、検索、比較、購入など)を横軸に設定
- 各デジタルチャネル(ウェブサイト、アプリ、SNSなど)を縦軸に配置
- 各接点でのユーザー行動、フィードバック、コンバージョン率などのデータを記録
- デジタルマーケティング施策(コンテンツ、広告など)との関連を示す
- 離脱率の高いポイントや改善機会を特定する
カスタマージャーニーマップの作成ステップ
効果的なカスタマージャーニーマップを作成するためのステップを紹介します:
- 目的の明確化:ジャーニーマップ作成の目的(顧客体験の改善、新サービス開発など)を明確にする
- ペルソナの設定:対象となる顧客像(ペルソナ)を具体的に設定する
- 顧客調査の実施:インタビュー、アンケート、行動データ分析などを通じて顧客理解を深める
- ジャーニーの段階設定:顧客の行動を時系列で段階分けする(認知、検討、購入、使用、推奨など)
- タッチポイントの特定:各段階での顧客との接点を書き出す
- 顧客の感情やニーズの記録:各段階での顧客の感情、思考、行動、ニーズを記録する
- 痛点と機会の特定:顧客の不満や障壁、そして改善の機会を特定する
- ビジュアル化:情報を整理し、視覚的に表現する
- アクションプランの策定:発見した課題に対する具体的な改善策を策定する
- 定期的な更新:顧客の行動や市場環境の変化に合わせて定期的に更新する
カスタマージャーニーマップ活用のポイント
1. 部門横断的に共有する
カスタマージャーニーマップは、マーケティング、営業、カスタマーサポート、製品開発など、様々な部門で共有することで効果を発揮します。顧客視点を組織全体で共有し、一貫した体験を提供するための基盤となります。
2. データに基づいて作成する
推測や憶測ではなく、実際の顧客調査データや行動データに基づいてジャーニーマップを作成することが重要です。定性・定量両面からのデータ収集を心がけましょう。
3. 複数のペルソナを考慮する
顧客セグメントによって行動や感情は大きく異なります。主要なペルソナごとにジャーニーマップを作成することで、よりターゲットに合わせた施策が可能になります。
4. 継続的に更新する
顧客の行動や期待は常に変化しています。ジャーニーマップは定期的に見直し、最新の状況を反映させることが大切です。
5. アクションにつなげる
ジャーニーマップの作成自体が目的ではなく、発見した課題を実際の改善アクションにつなげることが最も重要です。具体的な改善計画を立て、実行していきましょう。
まとめ
カスタマージャーニーマップは、顧客体験を可視化し、改善するための強力なツールです。目的や状況に応じて適切なテンプレートを選択し、顧客理解に基づいた実用的なマップを作成することで、顧客中心のビジネス戦略を推進することができます。
このブログで紹介したテンプレートはすべてダウンロード可能です。あなたのビジネスに最適なテンプレートを選び、顧客体験の向上に活用してください。
よくある質問(FAQ)
Q: カスタマージャーニーマップとペルソナの違いは何ですか?
A: ペルソナは特定の顧客セグメントの代表的な人物像を表したものであり、カスタマージャーニーマップはそのペルソナが体験するプロセスを時系列で可視化したものです。ペルソナがキャラクターなら、ジャーニーマップはそのキャラクターが歩む道のりといえます。
Q: 小規模なビジネスでもカスタマージャーニーマップは必要ですか?
A: 規模にかかわらず、すべてのビジネスにとって顧客体験を理解し改善することは重要です。小規模ビジネスでもシンプルなジャーニーマップから始めることで、リソースを効率的に活用し、顧客満足度を高めることができます。
Q: BtoBビジネスでもカスタマージャーニーマップは活用できますか?
A: はい、BtoBビジネスでも十分に活用できます。ただし、BtoBの場合は意思決定プロセスがより複雑で、複数の関係者が関与するため、それらの要素を考慮したマップ設計が必要です。
Q: どのくらいの頻度でカスタマージャーニーマップを更新すべきですか?
A: 業界や市場の変化速度によりますが、一般的には半年から1年に一度の見直しが推奨されます。ただし、新製品の導入や大きな市場変化があった際には、その都度更新することが望ましいでしょう。
Q: カスタマージャーニーマップ作成のための無料ツールはありますか?
A: はい、Miro、Canva、Figmaなど、無料プランのあるオンラインツールでカスタマージャーニーマップを作成できます。また、Excelやパワーポイントなどの一般的なオフィスツールでも作成可能です。